「馬場チャン、今日予定空いてる?」
生番組の収録を終え、共演者であり、アナウンサーとして業界の大先輩でもあるトクミツにそう声をかけられた馬場典子は内心「しつこいなあ」と思いながら、どのように断ればカドが立たないだろう、と慎重に言葉を選び、
「せっかくですが・・・。」
と言いかけたが、それを遮るようにトクミツが言葉を被せる。
「Sのナカイ君も一緒に食事したいと言っているんだ、いいだろう?」
否応もなく、トクミツは典子の手をとり、待たせておいた車に半ば強引に乗せてしまった。
内心、ナカイと会って食事ができることが少し楽しみでもあったので、典子はトクミツの誘いを強く拒否はしなかった。
後部座席にトクミツと並んで座っていた典子が尋ねた。
「どこへ向かっているんですか?」
「ホテルだよ。最上階にいいレストランがあるんだ。」
脂ぎった顔にテレビで見せる上辺だけの作り笑いを浮かべながらトクミツが応える。
「さあ、到着だ」
トクミツに促されて車から降りると、たしかに豪華なホテルのようだ。レストランはこの上にあるとトクミツは言っていた。彼の後ろについてエレベーターに乗る典子。途中の階に着いたところで扉が開き、典子はトクミツに手を引かれてエレベーターから降りた。
「え...
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